イタリアの「父の日」は3月19日
日本の父の日は「6月の第三日曜日」ですが、イタリアでは「3月19日」が父の日です。
日曜日に家族でつどっておでかけ、食事、プレゼント・・・と経済をなんとか活性化したい政府のもくろみか、商店のビジネス臭がぷんぷんする日本の「父の日」とちがって、イタリアの「父の日」は、宗教色がつよい分、毎年「3月19日」固定で、曜日はいっさい関係ありません。
日本人には、その動機がどうもわかりにくいのですが、キリスト教に何万人もいる聖人のうち、有名どころの聖人が356日それぞれにあてがわれています。たとえば「2月14日」は「聖バレンティーノ(バレンタイン)」の日、ということになっているので「聖バレンタインデー(聖バレンタインの日)」なのです。
同じように「3月19日」には「聖ジュゼッペ」があてがわれて、「聖ジュゼッペデー」なのですが、聖ジュゼッペはなんと、キリストのお母さん、マリア様のだんな。
キリストのお父さんは「神様」ということになっているので、聖ジュゼッペは実のお父さんではありません。つまり、聖ジュゼッペは、キリストの育てのお父さん。キリストを大事に育てあげたお父さんの聖ジュゼッペの日、3月19日を「父の日」に・・・
ということで、最後まで日本人にはぴんとこない理由ではありますが、とにかく3月19日は「父の日」なのです!
父の日にたべる「ゼッポレ(Zeppole)」とは?
父の日はイタリアでも母の日よりも影がうすく、日曜日という訳でもないので、うっかり忘れられてしまいそうなのに、毎年、ジェノベーゼは、この「父の日」を心待ちにしています。
その理由が、ゼッポレ(Zeppole)。
ジェノバでは、父の日には「ゼッポレ」というお菓子を食べて、聖ジュゼッペをお祝いする風習があって、ゼッポレは3月19日の「父の日」とその前後の日曜日のみの数日間限定でお菓子屋さんの店頭にならびます。
ドーナツの上にクリームをしぼって、甘く煮たチェリーをのせた、重量感たっぷりの揚げ菓子にみえますが、たべてみると実はけっこうかるい食感なので、調子がよければ2個ぐらいぺろりと食べられます。
揚げドーナツのように見える土台は、余分な水分をとばしてさくっと香ばしい食感をプラスするために、最後にさっと高温の油であげているだけで、実は8~9割がたをオーブンで焼いているので、焼き菓子のようなどっしり感も、揚げ菓子のような油っぽさもなく、ケーキともドーナツともパイとも違う、口の中でほどけてとけていくようなフシギな食感です。
この独特の食感の生地とカスタードクリームとの絶妙なハーモニーはイタリア人を悶絶させるおいしさなのです!
「父の日」には、いつものバールにあつまって、ゼッポレを食べるジェノベーゼ。
ちなみに、イタリアでは「あまいモノがニガテで・・・」という男性は皆無で、大の大人が、粉ざとうで口のまわりをよごしながら、生地のさくさく度合やクリームとのコンビネーションを絶賛しつつ、ゼッポレをほおばる姿はほほえましいかぎりです。
イタリアは、クッキーやナッツケーキなどの素朴な焼き菓子が多くて、日本の洋菓子のレベルはバツグンに高いので、日本人が「おいしい♪」とおもうお菓子は実はすくなめ。ただ、独特のかるさをもつさくさく生地と重すぎず、軽すぎないクリーム、フランス菓子とも日本のケーキともちがうオリジナリティあふれるイタリアのお菓子「ゼッポレ」は、舌のこえた日本人にも「はじめての味!」だと思います。
もしも、3月19日前後にイタリアに滞在する機会があれば、ぜひ、地元で人気のお菓子屋さんをのぞいてみてください♪ときに、日本のシュークリームが恋しくなるわたしが自信をもっておススメします!
こうして、今年の父の日は、大の大人9人でゼッポレを食べてすごしたわたしたち。
去年の「おいしかった」記憶をうわまわるおいしさに感動して、「レギュラーメニューに加えるべき!」とリクエストしたものの、商売気のうすいイタリア人はこれからもほんの数日だけゼッポレを売って、ジェノベーゼは「父の日」が近づくと、ゼッポレの話に花がさかせることでしょう。
おいしいゼッポレの食べられるお店
名前 | Bar Pasticceria Giuse(ジューゼ) |
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住所 | Via San Lorenzo 32, 16123 Genova (サンロレンツォ大聖堂からサンロレンツォ通りを約20m下って右手) |
TEL | 010 247 2999 |
定休日 | 火曜日 |