イタリア人とアンティークマーケット

キアーバリのマーケット

古いモノ、歴史あるモノを大切にするイタリア人にとってアンティークマーケットは、骨董品好きな人のためだけの特別な場所ではなく、年齢や性別を問わず、日常生活に溶け込んだひとつの文化だと思います。
ジェノバだけでも比較的大きなものが月に4回、小さな広場でこじんまり行われるものなどを含めるともっとたくさんのマーケットが定期的に行われています。

キアーバリのマーケット

街全体が400店のアンティークにうめつくされるキアーバリのマーケット

マーケットごとに「貴重なアンティーク家具がたくさん出品されるマーケット」「雑誌、新聞、本、版画など印刷物が豊富なマーケット」「ヴィンテージの服やバッグがメインのマーケット」「午前中にお値打ち品はすべて売り切れるマーケット」など、それぞれ色があって、マーケットをはしごしても飽きることはありません。

galleria mazzini

1800年代に建てられたエレガントなアーケード内で行われるアンティークマーケット

そんなマーケットに集まるイタリア人をよく観察していると、どうやら2種類のタイプがあるようです。

まずは、新しく購入した家の家具を探す人、ヴィンテージアクセサリーや帽子を探す人など、必要なときにマーケットを活用する人。まるでショッピングセンターでお買い物する感覚で、友達や家族とアンティークマーケットを散策し、目当てのものを物色します。

ジェノバのアンティークマーケットで買い物中

家具は全部マーケットで。これは玄関に♪

家に友だちを招待することの多いイタリアでは、家は自己表現の手段のひとつ。自分が住む家の内装を自分らしくセンス良く保つことは、自分に似合うセンスのよい服を身に着けるのと同じぐらい大切なことなのです。
特にお金持ちじゃなくても、イタリアの家は日本の家と比べると基本的にかなり広くて部屋数も多く、押入れやクローゼットなどの備え付けの収納がありません。
無駄なものをなるべくなくした日本の家とちがって、そもそもヨーロッパは家具の文化。
洋服ダンス、靴を収納する家具、タオルを収納する棚、ベッドルーム用のペアの引出し、男性のスーツを一式をかけるツールなど、日本では見たことがない種類の家具など。
イタリア人は、マーケットに根気強く通い、じっくり時間をかけて気に入った家具を揃えていくのです。

裁縫道具を収納するケース

裁縫道具を収納するケース

もうひとつのタイプは、いわゆる「コレクター」の部類です。
コレクターの頭の中には、マーケットの年間スケジュールがすべてしっかりインプットされています。そして、マーケットの日にはどんなに疲れていてもつい早く目が覚めて、マーケットの陳列が完了しない早朝からうろうろ。
第二次世界大戦グッズ、世界地図や地球儀、ロイヤルコペンハーゲンのお皿や古い写真など、特定のものを集めているコレクターにとって、マーケットの日は「もしかしたら、今日はあれが見つかるかも」「今こうしている間にも誰かが買ってしまうかも」と考えるだけでいてもたってもいられなくなってしまうのです。

マーケットで売られているものは、基本的にすべて一点モノ。何年も探してやっと手にはいることもあるし、たまたま通りかかった町のマーケットでふと出会うこともあります。そんな一期一会が毎回起こるマーケットは、イタリア人にとって想像するだけでドキドキしてくるほど楽しい場所なのです。

アンティークマーケットに通い始めて最初のうちは気づかなかったのですが、どうやら私は陶器の動物や人形に果てしなく魅かれる「コレクター」だということが最近分かりました。

ビスクイ

この独特の愛らしい顔をしたこの小さなお人形は「ビスクイ」という素材でできています。
温かみのある手触りと愛嬌のある姿にキューンとして連れて帰っているうちに、結構なコレクションになりました。

ビスクイはそもそも1700年代に陶器の失敗作から生まれました。陶器は土を練って成形、素焼き、絵付け、うわぐすりを塗って焼くことで完成するのですが、ビスクイにはうわぐすりで表面をつるっと光沢を持たせる処理がぬけているのです。表面にうわぐすりがかかっていない分、軽くて素朴な味わいがありますが、壊れやすく1700年代のビスクイは現在ほとんど残っていないようです。
1800年代に入ると、ビスクイのやわらかいパステルカラーと温かい手触りが人形の肌にぴったりだと注目されるようになり、瞬く間にヨーロッパのお人形の顔や手足はこの「ビスクイ」になりました。
この時代にビスクイは「陶器の失敗作」ではなく、ひとつのカテゴリとして研究、生産されたため、やさしい手触りなど、ビスクイらしい特徴をのこしながら、壊れにくく改良され、1800年代以降のビスクイはマーケットでもたまに巡り合うことがあります。

その時のお財布事情によって決心がつかないときは、もどってくると「もう売れちゃったよ」となる可能性が充分あることを覚悟してからマーケットをぐるっと一周することにしています。
ただ、私の場合は、方向音痴なこともあって、規模が大きいマーケットだとぐるっと一周しているうちに、目当てのモノがあった場所が分からなることもしょっちゅうなので、恋に落ちてしまったらそこは一期一会。値段交渉をすばやく終えて、さっと買ってしまうのが後で地団駄を踏まないためのコツです。

子供のおもちゃ

なつかしさあふれる子供のおもちゃたち

アンティークマーケットにならぶありとあらゆるものの中には、「誰が買うねん?」というたぐいのものが結構あって、一人でつっこみを入れながら見ているとお目当てのモノがみつからないとき、高すぎて手がでないときでもテンションがさがりません。
まずは「へんなものさがし」を目標にしてマーケットを散策すれば、アンティークに全く興味がない人でもきっと楽しめるとおもいます♪

頭専門店

頭専門店?

3 件のコメント

  • はじめまして、GWに13年ぶりにイタリアに行きます。
    今までヨーロッパに行っても、あまり興味がなかったのですが、最近骨董市に興味が出てきて、こちらのサイトにたどり着きました。
    ジェノバにも行く予定なのですが、土日は街を歩いてれば骨董市に出会える感じでしょうか?
    5/1にやってるというOvadaの骨董市も考えたのですが、もしジェノバで市内で行けるならそれがいいかなと思っています。
    突然の質問で申し訳ありませんが、教えていただけると嬉しいです。

      • ご返信ありがとうございます。
        残念ながら、4月の終わりの土日滞在で5月頭は行けそうにありません。
        せっかく教えていただいたのに、残念です。

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    イタリア在住バイヤー&ブロガーです。リグーリアの希少なワインやオリーブオイル、ジェノバっ子だけが知ってる穴場スポットなどを紹介します♪ちなみにイタリア語のブログのフォロワー5000人、ジェノバではCocoJapanとして結構有名人です!