本拠地ジェノバでもたどり着くのは至難の業。幻のジェノバ料理「カッポンマーグロ」

ジェノバは、魚介類とオリーブオイルを食材として使うヘルシーな「地中海料理」がベースです。比較的あっさりしているため、日本人の口に合い、バジルソースのパスタ、フォカッチャなど、ジェノバの料理が日本に浸透しているのは、うれしいかぎりです。

そんなジェノバの料理の中で、野菜と魚が食生活の軸にある日本人の感覚にもっともマッチしていると感じるのは「カッポンマーグロ」。そろそろ日本でも有名になってもらいたいと思います♪

知る人ぞしるジェノバ料理、カッポンマーグロ(Capponmagro)

とつぜんですが、イタリアではニワトリの肉は、メスのトリ肉、オスのトリ肉、そして、去勢したオスのトリ肉、の3種類に分類されます。

このうち、去勢したオスのニワトリの肉を「カッポーネ」というのですが、オスのニワトリは去勢すると、去勢しないふつうのオス鶏よりも大きく、おいしく育つらしく、イタリアではこの「カッポーネ」をクリスマスなどのイベントで、メインのごちそうとして食べる風習があります。(ちなみにクリスマスにシチメンチョウを食べるのはアメリカ)

さて、カッポンマーグロの「カッポン」はこの「カッポーネ」からきていて、そして「マーグロ」はイタリア語で「やせている、リッチじゃない」という意味です。

つまり、カッポンマーグロとは「低カロリーのカッポーネ(去勢したオスのニワトリ)」という意味なのですが、実は、カッポンマーグロにカッポーネはおろか、トリ肉自体、一切つかわれていません。

そもそも、カッポンマーグロは、漁師の料理として誕生したメニューでした。
海辺に住む漁師にとって、山の幸である「カッポーネ」は食べたくてもなかなか手にはいらない、とても貴重な食材です。あるのは、新鮮な魚介類と貴族が船上でひらくパーティ料理の残り物でした。
野菜などの残り物を再利用したり、豊富な海の幸を贅沢に使いながら、おいしい「カッポーネ」のような味を再現しようとしたのが「カッポンマーグロ」のはじまりです。

20人前、5kgにもなる手作りカッポンマーグロ

20人前、5kgにもなる手作りカッポンマーグロ

そんな「その辺にある食材でカッポーネみたいなモノを」というこだわり感うすい動機で誕生したカッポンマーグロですが、それははるか昔の話。

多種類で高価な食材の確保、ながすぎる調理工程から、ジェノバの「めんどくさい料理ナンバーワン」といってもいいほどのカッポンマーグロは、カッポーネが簡単に手にはいる今、クリスマスやパスクワ(イースター、感謝祭)などのイベントのヘルシーで贅沢なパーティメニューへと地位が上昇したのでした。

カッポンマーグロは「魚介のサラダ」ではありません!

カッポーネが存在しない日本で「カッポンマーグロ」は日本語に訳しようがないのか、なぜか「魚介サラダ」と翻訳されているようです。そして、どうやら日本のイタリアンレストランでは、「魚介サラダ」の名前にそって魚介類をお皿いっぱいに盛りつけた料理が「カッポンマーグロ」として、お客さんに提供されているみたいで、たいへんかなしいです。

カッポンマーグロは、イタリアでは魚介類が高額なこと、野菜をふくめた多種類の食材の確保、そして、それぞれの食材ごとにおこなう下処理などめんどくさい手間暇によって、カッポンマーグロの本拠地、ジェノバのレストランでも「カッポンマーグロ」という名前の「しょうもない魚とじゃがいもの前菜」を出すところはたくさんあります。

ジェノバをさっと通過するツアーの場合、ただしいカッポンマーグロに出会える確率はとても低いことはたしかです。
でもやっぱり、カッポンマーグロは「魚介のサラダ」ではありません!

これで10人前。クリスマスのホームパーティ用のサイズ

これで10人前。クリスマスのホームパーティ用のサイズ

パーティでは切り分けていただきます

パーティでは切り分けていただきます

数種類の野菜と魚介類とパセリのソースを、複数層に重ねてなじませる、どちらかというと魚と野菜の押し寿司のようなイメージです。

ちなみに、絶品のカッポンマーグロをつくることで有名な友人のカッポンマーグロのレシピはこんなかんじ。

上から、クルマエビ、ロブスター、パセリソース、アーティチョーク、パセリソース、白身魚、パセリソース、インゲンマメ、パセリソース、ロブスター、ニンジン、パセリソース、ブロッコリー、ビート、パセリソース、ジャガイモ、パセリソース、カチカチののフォカッチャ、終了。

材料をそれぞれを別々にゆでるなどの下処理をしたうえで、容器に各材料ごとに層をつくっていくのですが、その工程たるや、気が遠くなる作業です。
レストランやお総菜屋さんで高額になるのもうなずけます。

ジェノバでおいしいカッポンマーグロをたべるには?

手間暇がかかって、食材費がかさむカッポンマーグロは、レストランでも敬遠したい一皿。カンペキなカッポンマーグロを毎日仕込むのはレストランにとって大きな負担なのです。

そんな理由で、残念なことにジェノバでも本格的なカッポンマーグロを提供するレストランはひとにぎり。
材料の中にパセリソースと白身魚、エビがはいっていれば、なんとなく「カッポンマーグロっぽい感じ」にはなるので、ぎりぎりカッポンマーグロの雰囲気がつたわるレベルに材料や工程をへらした「カッポンマーグロもどき」の料理を「カッポンマーグロ」として堂々とだしてくるレストランの方が多いので、要注意です。

それでもジェノバで食事をする機会があれば、ぜひ、日本にはまだ上陸していない「ほんとうのカッポンマーグロ」を知ってもらいたいたく、私がさんざんしょーもない「カッポンマーグロもどき」に遭遇しながら、ようやくたどりついた「超おいしくて、本格的なカッポンマーグロが、まーまーお手軽な価格でたべられるレストラン」を紹介したいと思います♪

spinola

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ジェノバのレストラン

あかるくておおらかなイタリア人は、何事にもオープンなようですが、実は食に関してとても保守的。伝統的な昔ながらのレシピをかたくなに守り、いつまでも愛し続けるのです。

ただ、そんな伝統的なイタリア料理には「手間と時間をかけることこそおいしさにつながる」理論があるようで、野菜も魚も長時間にこんでうまみをぎゅっと凝縮する傾向があります。食材の香りや特徴をそのままいかす調理方法の日本食になれた日本人には、イタリア料理の「ぎゅっと濃縮された感じ」が重たく感じることもしばしば。

実は日本で人気があるイタリアンレストランのメニューは、たいてい、伝統的なイタリア料理のレシピを軸に、日本人の口にあうような「あたらしい感覚」をプラスしたアレンジをくわえています。

食に保守的なイタリアの中でもさらに保守的な町とされるジェノバには、どちらかというと「古くさい」ほどに伝統に忠実なレストランが多いのですが、ここは「あたらしい感覚」を上手にプラスしつつ、おいしくてリーズナブル、旧市街地のどまんなか、という立地のよさもあって、観光客にとっても、地元にすむ私たちにとっても、貴重でありがたいレストランです。

ぎっしりと魚と野菜とソースが層になっている正しいカッポンマーグロ

ぎっしりと魚と野菜とソースが層になっている正しいカッポンマーグロ

ジャガイモやアスパラガスなど、ジェノバ料理によく登場する食材をつかいながら、あたらしさのあるセコンド

ジャガイモやアスパラガスなど、ジェノバ料理によく登場する食材をつかいながら、あたらしさのあるセコンド

ぎっしりと丁寧に下処理した魚と野菜をかさねた「ほんものの」カッポンマーグロはアンティパスト(前菜)としてマスト。ごらんのとおり、けっこうボリュームがあるので、自家製のフォカッチャとパンをつまみすぎないように、おなかの満たされ具合をみながら、プリモ(パスタ、スープなど一皿目)かセコンド(メイン料理)のどちらかをオーダーするとよいとおもいます。

どれを選んでもイタリア料理としての基本をおさえつつ、オリジナリティがあふれるジェノバ料理をたのしめます♪

カッポンマーグロのおいしかったレストランを紹介していたのですが、この前、久しぶりに訪れると質がものすごく下がっていたので、リンクを削除します。
また新しいお店を見つけ次第、情報を追加しますね!(2020-02-24)

COCO
ジェノバで魚料理をたべるなら、火曜日がおススメ

ABOUTこの記事をかいた人

イタリア在住バイヤー&ブロガーです。リグーリアの希少なワインやオリーブオイル、ジェノバっ子だけが知ってる穴場スポットなどを紹介します♪ちなみにイタリア語のブログのフォロワー5000人、ジェノバではCocoJapanとして結構有名人です!