ヨーロッパ一の大きさを誇るジェノバの旧市街で夕食の買い物しようとするとき、鶏肉を買うならあそこ、香辛料ならここ、スープ用の魚なら・・・というように、それぞれの専門店をめぐるのがすごく一般的。
一か所でなんでもそろうスーパーマーケットより100年以上続く老舗の「鶏肉屋さん」「魚屋さん」「果物屋さん」がジェノベーゼのハートをがっちりつかんでいるので、人気のお店はいつでも大にぎわいなのです。
イタリアの職人気質はそんな小規模なお店にこそ発揮されていて、食品以外にも「くぎ専門店」「電球専門店」「金具専門店」「スーツ仕立て専門店」「帽子専門店」「額縁専門店」など、日本ではもはや存在しえないビジネスモデルのお店が充分機能しています。
それは、店の品揃えや品質はもちろん、店主のその分野における専門知識、経験、職人技などスペシャリスタとしての資質を信頼して、そこに価値を見出しているからこそなのです。
値段、コストパフォーマンスだけをチェックして購入することになれてしまった日本人には「なぜ、わざわざ高い店で!?」と思うかもしれませんが、フレームを支えるくぎ一本においても、専門店で店主とコミュニケーションをとりながら、希望したものと一ミリ違わぬ真鍮のかっこいいクギを手に入れることはイタリア中で昔から自然に行われていたことで、ジェノベーゼは今でもそのよさをよく分かっているのです。
たとえば、ジェノバの旧市街で4代続く老舗の鶏肉屋さんでは、買い物するときじゃなくても鶏に関するどんな相談にものってくれるし、献立にこまったら伝統の鶏肉レシピをいくつでも伝授してくれます。
アンティークマーケットで一目ぼれした版画を買えば、額縁を知り尽くした額縁屋の店主が、額縁の素材、縁取りの紙の色など納得がいくまで新しいアイデアを出し続けてくれます。
電気屋さんでは、今使っているものよりもちょっとだけ明るい電球、温かみがある電球をといった微妙なリクエストにいろんなメーカーの電球を実際に灯してみて、お客さんと色や雰囲気を確かめながら商品を決定します。
老舗帽子屋さんでは「私は帽子が似合わない」というお客さんでも必ず似合う帽子が見つかることで有名です。
ひっそりした路地にはイタリア中の有名なカメラ店が修理を依頼するイタリアでもっとも技術があるカメラの修理屋があります。
世界中のどんな香辛料、どんな塩でも必ず見つかる香辛料のお店があります。
買い物につかれたらちょっと座ってお茶ができるバールもあるし、フォカッチャみたいなファーストフードもレストランも、小さなエリアに全部がそろっていて、つまり、ジェノバの旧市街地全体で「1つの百貨店」のイメージです。
ジェノバの旧市街地はそんなプロフェッショナルな小さい専門店が路地に点々と集まって住民の生活を支えているのです♪