リグーリアでは、10月からオリーブの収穫時期。オリーブの産地では、こんな風に網を張って、熊手のような電動の機械をつかってオリーブの実を収穫している風景が1月ごろまで見られます。
ちなみに、アペリティーボのおつまみや、ジェノバ風魚料理、オリーブ入りのフォカッチャなど、ジェノバで口にするオリーブはたいてい、小さめの楕円形で濃い茶色「タジャスカ(taggiasca)」という品種です。
「ごま油」「菜種油」「コーン油」について、「どの品種のごまを使っているのかな?」「どこが起源のコーン種かな?」となんて考えることはまずないですが、「オリーブオイル」については、「どの品種のオリーブか?」はとっても大事。なぜなら、イタリア中にたくさんあるオリーブの品種は、それぞれ、見かけも味も全然ちがうからです!
どうしてインペリア(Imperia)?
リグーリアで圧倒的に愛されるオリーブ「タジャスカ」の名産地をイタリア人に聞けば、100パーセントの確率で「インペリア!」と返ってくると思います。インペリア州は、ジェノバから西、フランスの優雅なリビエラ、コートダジュールに続く道の途中にあって、温暖な気候と連なる山の高低差を利用して、良質な観賞用のお花やワイン、そして、タジャスカオリーブを生むD.O.P.の生産地としても有名な地域です。
タジャスカオリーブについては、そもそも、この地にはるか昔からタジャスカの木が自生していて、それを人間が手を加えて発展させたのが、インペリアのオリーブ産業の始まりと言われています。つまり、インペリアはタジャスカオリーブに選ばれた土地なのです。
まず、タジャスカは、海抜150~500mで栽培されたものが、もっとも品質が良いとされます。
海抜150m以下だとオリーブの実ががフニャフニャでおいしくなく、海抜500m以上になると、気温が低くなりすぎてオリーブの木自体がうまく育たない・・・
ぎゅっと味のつまったおいしい実のオリーブが育つ500m〜1000mの低い山が連なり、強い季節風が吹いて、天気がコロコロ変わるジェノバとちがって、天候が安定しているインペリアは、タジャスカオリーブにとって最適な環境だったのです。
こうして、タジャスカ種のオリジン、かつ、タジャスカオリーブが育つための条件をすべて備えた場所であるインペリア州は、昔も今も変わらず満場一致で「良質なタジャスカオリーブの産地」なのです!
おいしいタジャスカオリーブオイルの条件
オリーブオイルは、オリーブの品種、オリーブが育つ環境、天候、熟し加減、オイルにする製法など、複数の要因が品質や風味を左右しますが、まず、イタリアで「最高品質のオリーブオイルである」という認定を受けた「エクストラヴァージンオイル」として販売するには、成分を化学的に分析して判定する、きびしい品質テストがあります。そこで、品質が最高ではない判断されると、それはただの「オリーブオイル」であり、「エクストラヴァージンオイル」にはなれません。
さらに「インペリアで生産された高品質なタジャスカオリーブだけを使用したエクストラヴァージンオイル(Monocultivar Taggiasca)」として認定されるには、さらなるテストにパスする必要があります。良質のタジャスカオリーブが育つ条件の整ったインペリアにおいても「タジャスカだけを使用したエクストラヴァージンオイル」として認められるのは、それほど簡単ではないのです。
夏からずっと雨が少なく、10月に入ってからも暖かい日が続いた今年のリグーリア、あちこち散策する観光客にとっては最高なのですが、実はオリーブにとってはいまいち。十分な水が必要なオリーブは、雨が少ないと実がかたく、小さく、収穫量がへる傾向になるのです。
そんな「かたく、小さく」育ってしまったオリーブの実は、残念ながら「タジャスカオリーブのエクストラヴァージンオイル」にはなれません。たしかに「インペリアで育ったタジャスカ品種のオリーブ」であっても、ただの「イタリア産のオリーブオイル」として、販売されることになるのです・・・
前日に降った雨のおかげで、この日は丸々とした、ツヤツヤみずみずしいオリーブの実が収穫されました!
精気をとり戻したオリーブの木は、たわわに実をつけ、収穫の時期を待つばかり。今後はリグーリアでも気温が下がって、秋らしくなるとのことで、高い品質のオリーブが収穫される予定です。
こうして選りすぐられた高品質なタジャスカオリーブの実だけで作ったインペリアのエクストラヴァージンオイルは、デリケートで自己主張しすぎず、魚料理や野菜の風味を損なわずに、こくと香りをプラスするため、素材を生かしたシンプルなリグーリアの料理と相性が良く、そんな理由でリグーリアの人々にこれまでずっと変わらず愛されて続けてきたのです♪
インペリアの生産者の強み
酸味を抑え、やわらかく、繊細な風味をもつタジャスカのオリーブオイルは、ドイツやフランスなどのヨーロッパの国やアメリカなど、オリーブオイルを生産しない国だけでなく、イタリア国内でも、魚を良く食べるナポリなどのカンパーニャ地方、バーリなどのカラブリア州で「隠れた」人気があります。
「隠れた」というのは、つい150年前まで、それぞれの町がバラバラの国だったイタリアでは、地域ごとに別の国ぐらいの文化の違いがあることもあって、その郷土愛は果てしなく、それぞれの名産物だけを褒めたたえる傾向にあるからです。
例えばプーリアの人は、「プーリアのオリーブオイルこそ世界一!」とかならず主張します(笑)。でも実は、オリーブオイルにこだわりが強い分、その日の料理によって使い分けするために、家にはいろんな地域の特色あるオリーブオイルを複数そろえていることもよくあります。つまり、別の州のイタリア人に認められていることは、品質の高さの裏付けといえるでしょう!
さて、高品質なオリーブの実にたどり着くまで、相当な労力が必要なことはわかりましたが、オリーブオイルの製造方法自体はとてもシンプル。
- 収穫したオリーブの実を選別
- 水できれいに洗う
- 潰して油を絞る
ただし、この工程にかけるべき時間は、短くなければなりません。オリーブの実は、それ自体が「油」です。器にそそいだ油を空気中にそのままに放置しておくと、酸化した味と匂いを発するように、オリーブの実も、収穫した瞬間から酸化がはじまります。収穫後、数時間の間に絞って、オリーブオイルにする必要があるのです。
朝、オリーブの実を収穫したら、なるべく早くオリーブオイルに仕上げることへ全力で挑みます。
これは18年前まで活躍していたオリーブの実を圧搾する機械。創業者の時代に石うすのような道具を使ってオリーブの実を潰していたのを、そのまま電動に変えたイメージです。
創始者の長い経験から培った知識と、伝統的な製法に敬意を払いながら、革新的なテクノロジーを拒まず、良質のオリーブオイルを作ることに注力しました。創業者の時代に存在しなかった高機能な圧接機械は、オリーブの実をなるべく空気に触れさせない構造で、石を使わずに素早くオリーブの実を潰すことができ、さらに使用後は簡単に清潔を保てる設計です。
昔ながらの石を利用した機械でも十分良質なオリーブオイルを生産できるにもかかわらず、莫大な投資をして、オリーブオイルを酸化させないための最大限の努力をするのは、ひたすら「より高品質なタジャスカオリーブオイル」をめざすためです。
高い志をもって生産されるタジャスカのエクストラヴァージンオイルは、これまでリグーリアだけで長く伝統的に愛されてきた時代のオリーブオイルからさらに品質は高くなり、今後も進化していくことが期待されます!
こだわり抜いたオリーブオイルと相性の良いバルサミコ酢や、トリュフ、バジル、唐辛子、生姜などの風味を加えたオイルなど、関連商品にも注目です。お問い合わせは、こちらから!