ISの混乱で難民がどんどん流れ込んでいるヨーロッパ。
「日本人=誠実で安全な消費者」という安心感で日本人にはさらっとビザを発給してきたヨーロッパ諸国も、このまま外国人であふれかえることをおそれて、今後、日本人へのビザ発給条件をきびしくするのでは?といわれています。
実際、フランスでは日本人へのビザ発給の条件が年々きびしくなっているそうですが、イタリアは今のところ、こんな感じです。
ヨーロッパへの玄関口、イタリア:難民編
地中海にながく張り出す地形のイタリアは、アフリカやアラブなど難民を排出する地域に「もっとも上陸しやすいヨーロッパ」として「難民の玄関」になっていました。
ドイツのように大陸続きの立地なら、陸の国境を封鎖して、難民を自分の国土になんとしても入れない作戦がとれますが、イタリアのように海にかこまれていては、封鎖は不可能。シチリア島など、イタリア南部のいずれかの港や沖合いに命をかけてなんとかたどりついた難民たちを見殺しにするわけにもいかず、イタリアの民間団体、警察が難民を必死に救助しているのです。
衣服や寝る場所、食事などが供給されつつ、無事、イタリアで難民として認められると、命の危険をまぬがれることが記載された「難民証明書」を発行され、国際法で命の補償が得られます。ただしお金が足りないイタリア政府から手厚い援助を受けられるわけでもなく、永久に安泰ではありません。
そこで難民がめざすのはフランスやドイツ。
ちなみに、ヨーロッパには移動の自由や通貨の統一、関税を撤廃といった手段でヨーロッパ経済を高め合うための「シェンゲン」という同盟によって、イタリアで済むことを許された人は、シェンゲンに加盟するヨーロッパのどの国でも住むことができるのです!
日本人にはオープンな性格で有名なイタリア人ですが、イタリアの国自体は、外国人や外国の文化に対してとても保守的で閉鎖的。税制や雇用条件のわるさ、長くつづく景気の低迷によって、外国人のための仕事がないことはイタリアにやってくる難民もわかっていて、イタリアでの難民認可されたあとは、職がみつかる可能性があるフランスやドイツにむけてイタリアを出国するのです。
ヨーロッパへの玄関口、イタリア:学生編
経済が好調で将来の有能な労働力を確保したいドイツでは、大学で勉強する外国人には補助金が月々支給されるという高待遇をうけられるという制度があります。
一方、イタリアにはそんな外国人にとって魅力的な制度はなく、一家の収入に応じて、学費が軽減される程度です。それでも、イタリアの大学では、アルバニア人、ルーマニア人、ロシア人、リトアニア人など、東ヨーロッパやアラブ諸国の学生がたくさん勉強しています。
私はイタリアを愛しているので、補助金目当てにドイツで勉強することはないのですが、医学や経済など、イタリア芸術や建築などイタリアでしか学べないことでないなら、ドイツの大学の方がいいんじゃないかな?と、素朴にめばえた疑問をアルバニア人学生になげたことがあります。
すると、「ドイツやフランスはアルバニア人に就学ビザを出さないのよ」とのこと。
つまり、彼女によると、経済的に安定していないアルバニアやルーマニア、アフリカなどのまずしい国の学生は学生ビザで不法労働するかもしれない、なにか悪事を働くかもしれない、という理由でドイツやフランスではVISAがおりないそうです。
一方、イタリアはその点、寛大。貧しい国の出身でも勉強したいという学生を拒絶することはありません。そして、シェンゲンの同盟国であるイタリアでちゃんと勉強すれば、アルバニア人でもその証明資料をもってフランスやドイツで補助金をうけながら勉強ができる可能性がひろがるのです!
こうして難民だけじゃなく、貧しい国の学生にとってもイタリアは「玄関口」となっているのでした。
どうして、イタリアはまずしい国の外国人にやさしいの?
まず思いつく理由は、イタリアは95%以上がカトリック教徒という超カトリックの国だということがあります。
子どもたちは小学校とは別にカトリックの教えをまなぶための教会の学校に通わされて、そこで神様がすべての種をつくった、とか、ノアの方舟とか、地球が平らだとか、聖書に基づいたカトリックの教えをしっかりまなびます。そんなカトリックの教えでは、「まずしい人に恵みをあたえること」は基本中の基本。
ジェノバを歩いていると「1ユーロ(120円程度)ちょうだい」「たばこ一本ちょうだい」と知らない人から声がかかるのは日常的なことです。日本人からしたら「だれ?知り合いだっけ?」と戸惑う以上のことはないのですが、イタリア人はそれを「あ、たしか小銭がここに・・・」とごそごそポケットをさぐって小銭をめぐんだり、「はい、どうぞ」と知らない人にたばこをあげたり。
「めぐまれない人に恵むこと」とは、よい行いとしてイタリア人に染みついた日常の動作にもなっている様子。そんなイタリア人にとって、めぐまれない難民をすくうことはきっと「当然の行為」なのです!(多分)
一方、日本人はどうでしょう?
長く景気が低迷しているといっても、経済が危機的なイタリアにくらべれば全然ましなレベルだし、(今のところ)戦争もなく安全で健康保障もしっかりしている日本人をすくう理由がカトリック的にはありません。
こうして、日本人はイタリアにとって「経済をささえる消費者」や「納税者」になることでVISAをゲットするしかないのです。ということで、イタリアに住んでいる日本人で多いのはこんな感じ。
- 私立の語学学校、料理やアートのコースに通っている
- イタリアの大学に通っている(音大が多いみたい)
- イタリア人と結婚している(夫がイタリア人のケースがほとんど)
- 日本の会社のイタリア駐在員(たとえばジェノバには東芝の営業所があります)
イタリアの就学ビザ発給事情
パリで生活している日本人の話によると、テロの関係で入国審査、滞在許可審査がますますきびしくなっているフランスでは、これまでのような「フランス人の職をうばわず、消費して経済をまわしてくれるありがたい日本人」への特別扱いはなくなってきているそうです。
日本人がもういらない、と政府がきめてしまったのか、日本のフランス大使館ではすでに語学の私費留学用の就学ビザを発行していない模様。ただし、大学に通うための就学ビザは出るそう。でも、大学の入試に受かるほどのフランス語の学力を日本の国内で身に着けることはできるのかしら?
さて、今のところ、慈悲深いカトリックの国イタリアは外国人の留学に寛大で、東京のイタリア大使館、大阪のイタリア領事館で、これまでどおり私費留学用の就学ビザを発給しています!
※2016年11月時点の情報です
よかったね。
VISAゲットまで多少の困難はかならずありますが、「とれるだけでもありがたい」とおもえばきっと耐えられる!がんばれ♪
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