日本で例えば、風邪をひいたら・・・
あきらかにただの風邪で、仕事が忙しかったり、時間の都合がつかなかったりしたら、「薬局」で薬を買ってしのぐかも?でも、なんだかよくわからない病気とか、インフルエンザだったりしたら、さらっと「病院」に行くのではないでしょうか?
一方、イタリア人は、なかなか「病院」に行きません。インフルエンザで高熱が出ても、「家であたたかくしてひたすら寝る」策をとります。病院に行けばいいのに、というと、「は〜〜〜?病院〜!?」とあきれた顔をされるはず。なぜならイタリア人にとって「病院」は、どうしても仕方ない時にだけいく場所なのです。
イタリアの医療制度
イタリア人が病院に行きたがらない理由は、まず、「お金の問題」ではありません。というのも、イタリアで病院にかかる費用はゼロだから。つまり、イタリアは「医療費無料」の国なのです。
イタリアでは、パスポートを持っているイタリア人だけでなく、イタリアで正式な手続きにおいて働いて税金を払っている人、その家族は、誰でも「医療費無料」。食事付きの入院費も全くの無料。たとえば、盲腸になって、救急車で運ばれて、緊急手術して、1週間入院しても、患者の負担なし、ほんとに「無料」なのです!
1.メディコ(Medico)
メディコ、はイタリア語で「医者」という意味で、イタリア人がもっとも使う医療機関。「医療機関」といっても、殺風景な狭い部屋に、事務机ひとつ、古いデスクトップPCといっしょに医師ひとりが待機しているイメージ。看護婦もいないし、血液や尿検査の設備もないので、問診ベースの診察が受けられるサービスです。薬局の数ぐらいメディコはいるので、そのうちの気に入ったどれかを「私のメディコ」として頼りにします。ちょっとした診察のあと、薬が必要であれば、処方箋を書いてくれます。(メディコは、たいてい、薬局に隣接しています)
2.病院(Ospedale)
イタリアでいう「病院(オスペダーレ)」とは、外科、内科、眼科、耳鼻科、入院施設など、全部がそろった総合病院のこと。オスペダーレは市に1個あるかないかなので、どうしても患者が集中して、診察、治療にたどり着くまでに相当な時間がかかることを覚悟しなければなりません。ちなみにイタリア第6の都市ジェノバには、サンマルティーノ、ガリエラ、ヴィッラスカッシの3つと小児科専門のガズリーニがあります。
3.救急病院(Pronto Soccorso)
イタリアで救急車を呼んだときに運ばれる先は「プロント・ソッコルソ」という救急病院。レントゲンや検査設備など、救急に必要な設備が整っているので、救急車を呼ぶほどではなく、自力でたどり着ける状態のときでも、気長に待つ覚悟があれば診察してもらえます。
4.グアルディア・メディカ(Guardia Medica)
日本語でどんなふうに訳したらいいのかわからないのだけれど、急病の場合、自力で動けずメディコの診療所まで行けない場合は「グアルディア・メディカ」という、往診に来てくれるサービスがあります。電話で医師と話ができ、さらに医師か医療スタッフの派遣が必要かどうか判断してもらえます。往診は混み具合によって、1時間程度で来てもらえたり、何時間もたって忘れた頃にやって来たり、その時の「運」です。
くりかえすようですが、これらの公立の医療機関での診察、治療費は、ほんとうにゼロ。薬局で買う薬代はもちろん自腹ですが、プロント・ソッコルソのレントゲン、グアルディア・メディカの往診も請求されることはありません。イタリア、経済危機なのに太っ腹!
イタリアに住んでいる日本人は?
イタリアで税金を払っていない学生などの外国人は、年間149.77ユーロ(*2017年時点)を支払うことで、イタリア人と同じ医療サービスを受けることができる仕組みがあります。(滞在許可証が必要)
日本人ももちろん、滞在許可証があれば、イタリア人と同じ保険証「Tessera Sanitaria(テッセラ・サニタリア)」を受け取る資格があるので、ぜひ持っておきましょう!
- 郵便局で代金の支払い
- 振込用紙の控えと滞在許可証を持ってASL(アズル)へ
- その場で、紙に印刷された簡易の「Tessera Sanitaria(テッセラ・サニタリア)」を受け取る
- 1週間ほどで、プラスティック製「Tessera Sanitaria(テッセラ・サニタリア)」が郵便受けに
保険期間は1月〜12月なので、年の途中にその年の1年分を支払ったとしても、12月末には失効します。なので、なるべく1月になるまでに翌年分の保険料を支払って、手続きをしておくとよいと思います。
また、滞在許可証の有効期限内の保証なので、12月までに滞在許可証の切り替えがある場合は、新しい滞在許可証と振込用紙の控えを持って、ASLに行って、新しいカードに切り替えてもらう必要があります。
休日に具合が悪くなったら?
ミラノやローマなどの大都市は、日曜や祝日もお店が開いていますが、ジェノバで日曜に店が開くようになったのはこの2〜3年ぐらい。今でも小さな街では「休息日」にはたらくことがNGなカトリック的風習から、日曜、祝日は、し〜んと静まりかえる地域も多いと思います。そんな日に具合がわるくなったら・・・と心配になりますが、実は、医療機関だけは日曜日でもけっこう稼働しています。
まず、薬局はイタリアのどの街にもたくさんあるのですが、日曜日や夜間は当番制があって、どこかしら開いている薬局を見つけることはむずかしくないはず。ということで、イタリアで休日に具合がわるくなった時には、こんな感じの行動が一般的。
1. 薬局(Farmacia)で薬を買う
処方箋が必要のない薬でなんとかなりそうな場合、「Farmacia di turno」でインターネット検索して、開いている薬局をさがしましょう!24時間やっている薬局もあるので、深夜でもトライする価値あり。ちなみにイタリアで薬局は、緑の十字型の電子看板が目印です。
2.グアルディア・メディカに電話する
休日に診療所を開けているメディコはまずいないので、医者に診てもらう必要がある場合、グアルディア・メディカの出番です。「Guardia Medica」でインターネット検索して、最寄りのグアルディア・メディカの電話番号をゲット。電話で医師と話がでるので、症状をきちんと説明できるように準備しましょう。
3.オスペダーレへ自力で行く
イタリアの病院は休日でも医師がいて、開いています。ただ、かなり待たされることは間違いないので、本当に具合が悪い時は、グアルディア・メディカを呼んだ方がよいでしょう。
4.救急病院(プロント・ソッコルソ)へ自力、または救急車で行く
事故や大きなケガ、緊急度の病気の場合は、まよわず、プロント・ソッコルソへ。救急車を呼ぶ電話番号は「118」です。
イタリアで生活するなら、いつでも「待ち時間」を計算に入れておくのはマスト!
イタリア医療制度の問題点
無料の往診システムまであって、医療システムにすごく力が入っているイタリアですが、では、日本の医療システムと比べて、ものすごくすばらしいかというと、100パーセントそうともいえません。
例えば公立の病院は人口に対する絶対数が少なく、いつでも大混雑、財政難、病院によってレベルがまちまち、担当医がつかない、などの問題点があります。専門的に弱い分野もあって、例えば、婦人科や泌尿器科、歯科は、お金を払って、私立の診療所にいくのがふつうです。
例えば、婦人科の診察は、1回30〜40ユーロ(5000円ぐらい)なので、公立の病院で長時間待つことを思えば、払える金額です。一方、イタリアの歯科はかなり高額です。レントゲン1枚とって80ユーロ、歯の掃除が150ユーロ、虫歯治療ともなると10万円超えもありえます。
そんな事情がわかってくると、費用の30%支払えば、私立も公立も区別なく、たくさんある医療機関の中から、都合が良いものを選べる日本って便利だな、と思います!