ジェノバで何日か過ごすと、なんども目にすることになるのが鮮やかな水色のお菓子の箱。バールのカウンターでカフェを飲むとき、ラッテリア(牛乳屋さん)、スーパーのお菓子売り場などで水色のパッケージを見つけたら、ぜひ一度、手にとって見てください。それは、真面目にリグーリアの伝統的なお菓子を作りつづけて150年、超老舗お菓子メーカー「グロンドーナ」の焼き菓子です♪
グロンドーナ(Grondona)って?
グロンドーナは、ジェノベーゼなら知らない人はいないジェノバのお菓子メーカー。19世紀半ば、「おいしくて安全な朝ごはんをお手頃な価格で!」と、現社長のおじいさん、オルランドが地元で生産された小麦粉と水でビスケットを作ったところからはじまります。
当時のイタリアで朝ごはんといえば、ほんのり甘いパンをスライスして水分がなくなるまでよーく焼いたようなサクサクビスケットが定番でした。大きな特徴があるわけではない素朴な焼き菓子ですが、オルランドは「毎日の素朴な朝ごはんこそ原材料にこだわるべき」という当時としては革新的な志をもち、良質な小麦粉とバター100%でビスケットを作り、「ビスコッティ・ダ・サルーテ(健康的なビスケット)」という名前をつけて販売したのです。
オルランドが完成させたビスコッティ・ダ・サルーテとジェノバの花形クッキーカネストレッリのレシピを引き継いだ2代目は、良質な小麦粉とバターを使ってパンドルチェなど、その他のリグーリアの伝統的なお菓子のバラエティを充実させ、「真面目なお菓子メーカー」としてジェノバ中のお店に提供するようになりました。
3代目となった現在のグロンドーナでは、創業者のレシピを忠実にまもりながら、トレンドを取り入れたあたらしい商品の開発を進め、砂糖をつかわないビスケットやオリーブオイルで作ったクッキーなど、ヘルシー路線の焼き菓子もラインナップに加わりました。
衛生的で近代的な設備がととのった製造工場では、かつてたくさんの人の手をかりていた工程のほとんどがオートメーション化されて、今や創業当時と比べて、大量生産と言ってもいいくらいの生産量になりましたが、グロンドーナのお菓子が150年前からずっとかわらず、ジェノベーゼに愛されてきたのには、3つの理由があります。
1. とことんナチュラル、保存料ゼロ!
グロンドーナのお菓子は、家で手作りしたお菓子のように保存料ゼロです。そもそもイタリアにおいて焼き菓子は、かつて冷蔵庫のない時代の保存食でもありました。保存性の高いバターと砂糖を使うこと、しっかり焼いて水分をとばすことで、お菓子の中で雑菌が繁殖しにくい環境をつくるため、保存料なしでも長くおいしさをキープできるのです。
さて、グロンドーナの工場では、出来立てを厚めの袋でしっかり梱包して外気をシャットアウトします。そして開封したら、早く食べきってもらえるように、1つの袋の容量を少なめに設定してあります。こうしてグロンドーナのお菓子は、保存料を使わなくても美味しさを8ヶ月間保てるのです!
2. フレッシュな「ホンモノ」の果物
ジェノバでクリスマスに食べる焼き菓子「パンドルチェ」を切り分けると、中には、色とりどりのゼリーのようなものが入っています。これはフルーツの砂糖漬け、フルッタ・カンディータというイタリアのスイーツです。レモン、メロン、オレンジなど、いろいろな種類のフルーツの皮が原材料なので、色は黄色、緑、オレンジとカラフルで、素朴なお菓子が華やかになることもあって、伝統的な焼き菓子にたびたび使われます。
ただ、このフルッタ・カンディータ、生の果物を時間と手間をかけて加工するので、実はけっこうお高いのです。それで、お手頃価格のお菓子には、フルーツではなく、かぼちゃを砂糖漬けにして、人工的に色をつけた「ニセモノ」のフルッタ・カンディータの場合がよくあるのですが、グロンドーナでは、果物から作った「ホンモノ」のカンディータのみを使っています。
そもそも、グロンドーナは、創業当時から「着色料や香料、エッセンスを使わない」というポリシーをもっています。ジェノバの伝統的なクッキー「カネストレッリ」の生地は、小麦粉とたっぷりのバター、砂糖卵にレモンの香りを加えてしっかり練りあわせて作るのですが、グロンドーナの製造工場では、クッキー生地を混ぜ合わせる大きな機械の横に、八百屋さんのようにたくさんのレモンとバールにあるようなバーで生ジュースの絞り器がおいてあります。これはレモンを一つ一つ絞って、絞りたてのレモン果汁をクッキー生地に加えるためです。
人工的に加工されたものを使わず、天然の素材にこだわることで、グロンドーナのお菓子は、手作りと同じデリケートな味と香りを感じられるのです。
3. グロンドーナ秘伝の天然酵母
ジェノバの焼き菓子は基本的にシンプルです。原材料は小麦粉、バター、砂糖がベースで、そこに卵やドライフルーツやナッツ、スパイス、果物などをアレンジして完成します。イタリアではどれもベーシックな素材ばかりですが、グロンドーナの焼き菓子はグロンドーナにしか作れません。それは、グロンドーナに代々受け継がれている「秘伝の天然酵母」が重要な役割を果たしているからです!
日本の家庭ではかつて(今も?)おばあちゃんのが受け継がれたぬか床を毎日空気を入れながら大切にしていたように、イタリアでは、パンやケーキを発酵させるのに必要な「天然酵母」を代々受け継ぐ風習がありました。オルランドは、ビスコッティ・ダ・サルーテの製造にグロンドーナファミリーが大切に育てていた天然酵母をつかいました。
取り扱いが簡単なイースト菌とちがって、天然酵母はとてもデリケート。天然酵母で生地を発酵させるには、寒いと活動しないし、37度を超えると死んでしまうので、適切な温度と高い湿気をたもつ必要があります。もとより、天然酵母に150年間元気でいてもらうのも至難の技。雑菌が混入しないように、新鮮な空気を取り込めるように、細心の注意を払って大切に育てられています。
かつてのイタリアのお母さんが家族のためにが愛情を込めて安全な材料をセレクトして、代々受け継がれた天然酵母を使って手作りしていたように、グロンドーナはジェノベーゼのためにとことん材料にこだわり、秘伝の天然酵母を守り続けているのです。ジェノベーゼへの愛情がたっぷりこもったグロンドーナのお菓子は、こうして安全なものを食べさせたい子どもにも食にこだわるグルメな大人にも愛されているのです。
グロンドーナが購入できるお店
名前 | ラッテリア(Latteria di Giordano) |
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住所 | Vico della Speranza 5, 16123 Genova |
定休日 | 日曜日 |
営業時間 | 月~土: 6:45~19:30 |